アパレル業界は大手のレナウンが事実上倒産するなど、苦しい状況が続いています。そんななかでも、ECやSNSを活用した新たなビジネスモデルで急成長している企業も少なくありません。このことから、アパレル業界はビジネスモデルの転換期に来ていると言えるのではないでしょうか。
今回は、そんなアパレル業界で注目される新たなビジネスモデルである「D2C」「P2C」について見ていきましょう。
アパレル業界はビジネスモデルの転換期に来ている
矢野経済研究所の調査によれば、日本のアパレル市場は1990年代に年間約15兆円だったものが、2019年には9兆円にまで縮小しているとのこと。さらに、アパレル市場は高級品市場と低価格市場の二極化が急速に進みつつあり、このことも市場全体の縮小につながっています。
従来は一般品が中心でしたが、このような二極化が進んだ背景には若年層の人口減少、スマートフォンなどのモバイル機器の普及による外出機会の減少などが挙げられます。実店舗からデジタルコンテンツへの消費志向が高まる昨今では、アパレル業界は新たなビジネスモデルを展開する必要があるといえるでしょう。
注目を集める新たなビジネスモデル「D2C」とは
そんななかで新たなビジネスモデルとして注目されているものが「D2C(Direct to Consumer)」です。D2Cはメーカーやブランドが自社で企画・生産した商品を、流注業者を介さずに自社ECサイトなどで直接消費者に販売するビジネスモデルです。
ECやSNSなどを通じて顧客と直接コミュニケーションを可能とし、中間コストを排除して低コストで高品質な商品を提供できます。さらに、商品を販売するだけでなく顧客とのコミュニティーを形成してライフスタイルを創造する取り組みにも力を入れている点が特徴です。
D2Cから派生した「P2C」にも注目
D2Cと併せて注目したいビジネスモデルが「P2C(Person to Consumer)」です。P2Cは著名なインスタグラマーやユーチューバーなどと協業するビジネスモデルであり、影響力の強いインフルエンサーを起用することで高い効果が期待できます。
実際に、靴・ファッションのECサイトを運営するロコンドと、ユーチューバーのヒカル氏が展開するブランド「ReZARD」とのコラボ商品を発売した際には、ヒカル氏がYouTubeで宣伝することで発売開始4時間半の間に約1億円もの売上を達成した事例もあります。
インフルエンサーの登場により、消費者は「誰が販売しているか」という点が購入動機に大きく影響するようになりました。情報があふれる現在において、大多数に向けられた従来の販売手法ではなく、個々人に合わせたD2Cと併せて、P2Cによる新たなビジネスモデルの構築がアパレル業界の今後の鍵となるでしょう。