新型コロナウイルスは私達の社会に大きな影響を与えています。通常通りの営業が行なえない企業も少なくないなか、雇用を守るための業種を超えた「従業員シェア」が広がっていることをご存知でしょうか。今回は、従業員シェアの概要からノジマやイオンなどで実施されている事例について紹介します。
「従業員シェア」とは?
従業員シェアは、人手が足りない企業が業績不振業者から出向者として人を受け入れる制度です。従業員シェア自体は、1980年代後半から90年代にかけて雇用維持の手段として積極的に活用されてきました。
昨今の新型コロナウイルスの影響を受け、外食や観光業などの非製造業は多大な影響を受けました。日経新聞の調査によれば、外食の上場企業100社では11月までに1,200人が異業種に出向していることがわかっています。
従業員シェアはあらかじめ期間を決めて実施し、業績回復後に人材を呼び戻せる仕組みとなっています。仕事のスキルを維持しつつ雇用も守るための取り組みが従業員シェアなのです。
ノジマ、イオン、パソナグループでの事例
家電量販店の株式会社ノジマでは、全日本空輸(ANA)や日本航空(JAL)従業員を受け入れ、約1週間の研修を経てノジマの販売部門やコールセンターの業務に従事してもらうこととしています。ノジマでは11月中旬から受け入れをはじめており、2021年春までに最大300人の社員の出向を受け入れる方針です。
また、パソナグループも12月から航空や旅行、ホテル業界などからの出向者を募集します。営業や人事などの業務を任せ、語学などの研修も実施する予定とのこと。出向期間は1年間で最大1千人近くまで受け入れる可能性があります。
さらに、イオングループのイオンリテールでは、居酒屋大手のチムニーから45人を受け入れ、居酒屋での接客や調理経験を活かして、スーパーなどへ移籍しました。スーパーでは鮮魚売り場を担当してもらうことにしており、出向を新たな採用機会に活かす動きにつなげています。
現状では雇用を維持できない企業にとって、社員を解雇してしまうと需要や業績の回復時に働き手の数や質が確保できなくなる可能性があります。従業員シェアであれば、雇用に加えて仕事の基本スキルも維持できるだけでなく、人件費もおさえられると見る企業も増えてきており、多様なスキルを持った人材を獲得するチャンスと見る企業も。
従業員シェアは新しい働き方の一つとしてコロナ禍での雇用を守るだけでなく、アフターコロナにおける事業継続のための有効な手段の一つと言えるでしょう。