電化製品などを取り扱う大手チェーンのビックカメラが「電子棚札」の導入を進めています。電子棚札は、従来の紙やシールの値札と比べてどのような効果が期待できるのでしょうか。ビックカメラが導入した電子棚札の事例について、解説していきます。
ビックカメラが導入した電子棚札とは
電子棚札は、価格などの商品情報を紙やシールではなく、電子表示するものです。ビックカメラでは、1.5インチ、2.6インチ、4.2インチの画面をもつ3種類の電子棚札を使用しています。画面は電子ペーパーとなっており、紙同様の読みやすさを実現できるものです。
電子棚札は店内のLAN環境に接続されており、表示する情報はワイヤレスに書き換えられます。電子棚札は電池によって動作していますが、通常の使い方なら10年ほどもつため、導入後の管理は難しくありません。
一部のビックカメラ店に導入されている電子棚札は、順次既存店や新店へ導入が進められています。
電子棚札の導入によるメリット・デメリット
ビックカメラが電子棚札を導入した際のメリットとデメリットを簡単にまとめました。
メリット
- 買わずに帰る客が減った
- 値札の変更作業の手間がなくなった
- 同社のECサイトとの連携ができる
ビックカメラでは、競合他社の価格を調査して自社の価格へ反映させているため、1日に複数回の価格更新が行われます。同店の販売員によれば、紙ベースの値札では価格更新のスピードが追いつかず、買わずに返ってしまう客が多かったそうです。電子棚札を導入したことで、本部からの価格変更指示に即座に対応できるようになり、毎日2~3時間ほど掛かっていた値札の変更作業は、ほぼ0になりました。
電子棚札のなかには、NFC(近距離無線通信規格)に対応しているものもあり、読み取ることで対象商品を同社のECサイト「ビックカメラ・ドットコム」で確認できるようになっています。ビックカメラ・ドットコムでは、商品のレビューや評価が記載されており、ユーザーが商品を選択する際の参考にすることが可能です。
デメリット
- 従来の値札よりも価格が見えにくい
- 初期投資の負担
電子棚札と従来の値札を比較すると、価格が見えにくいという欠点があります。しかし、昨今のユーザーは電子画面を目にする機会が多いため、それほど大きな問題とはならないでしょう。商品数が多いほど必要となる電子棚札も多くなるため、初期投資の負担はデメリットとして挙げられます。同店の広報担当者によれば、初期投資の負担額は少なくない、とのことです。
電子棚札というIoTにより新たなビジネスが実現
電子棚札はネットワークを通じてシームレスに情報を更新できるIoTの一つです。同社ではECサイトを運営していることもあり、リアル店舗とネット店舗を上手に融合できています。実際に商品を手にすることができるリアル店舗のメリットや、さまざまなユーザーの意見を確認できるネット店舗のメリットの両方を兼ね備えており、ユーザーの利便性向上に一役買っています。それだけでなく、販売者側の手間も減らすことができているのです。
ユーザーと販売者にとってWin-Winの関係を築き、リアルとネットの融合という新たなビジネスを実現させるIoTの実例といえるのではないでしょうか。