2020年1月に世界最大の小売業関係のカンファレンス「Retail’s Big Show & Expo」が開催されました。開幕の基調講演はマイクロソフト社のサティヤ・ナデラCEOが務め、小売業にとって「データ」がいかに重要であるかを強調しています。
今回は、小売業界の売上2トップのウォルマートとAmazonの小売IT化について見ていきましょう。
ウォルマートは現存店舗の延長路線
小売業界の売り上げトップであるウォルマートは、以前よりIT化に力を入れていました。リアル店舗を多数展開する同社では、在庫管理に焦点を当てた新たな取り組みを行っています。
ウォルマートは小売業の未来を担う技術を研究するインキュベーター部門を設立し、「インテリジェントリテールラボ(IRL)」と呼ばれる店舗を展開。IRLでは天井に多数のカメラを設置し、AIによって顧客の行動情報や商品在庫などの情報を収集しています。
IRL店舗にはデータセンターも併設されており、リアルタイムに商品在庫がなくなっていることや、在庫の補充タイミングを従業員に知らせることが可能です。今後はより多くのデータが集まることで、顧客の需要をあらかじめ予測して在庫補充などが行えるようになり、チャンスロスを減らせるとのこと。
顧客と従業員の双方にメリットをもたらす店舗づくりを進めています。
Amazonは新規アプローチによる新たな店舗展開
Amazonはウォルマートに次ぐ小売売上No.2。ウォルマートとは反対にリアル店舗を持たず、インターネット上でビジネスを展開していきました。
しかし、2018年に「Just Walk Out(ただ店を出るだけ)」を実現したリアル店舗「Amazon Go」を開始し、2020年1月現在では23店舗をアメリカで展開しています。
Just Walk Outの通り、Amazon Goはレジなし店舗となっており、AIを活用してレジによる決済を行わずに買い物ができる店舗です。顧客は専用アプリをスマートフォンなどの端末にインストールし、入店後は商品を手にとって退店するだけで買い物ができます。決済は後ほどAmazonアカウントに請求される仕組みです。
Amazonはウォルマートとは全く異なる新しいアプローチで、小売業界のIT化を推し進めているのです。
アプローチは異なるがIT化が重要な鍵
ウォルマートとAmazonは、それぞれが全く背景の異なる企業であり、アプローチも異なっています。しかし、双方に共通することは「データの収集と活用」といえるでしょう。
AIを活用してデータを収集し、活用することで小売業界の新たな姿を体現しようとしています。小売の売り上げトップ2社の施策から見ても、これからの小売業界にとって「IT化」は非常に重要な鍵であることが分かるのではないでしょうか。