東京都水道局では、2020年2月からコールセンターのオペレーター席すべてにAIを搭載した端末を設置し、業務効率化に活用しています。2019年3月から試験的に導入を進めていましたが、本格稼働をはじめて効果を得られています。
今回は、東京都水道局のAI活用事例の概要や、今後のAI活用の重要性について見ていきましょう。
東京都水道局のコールセンターでのAI活用事例
東京都水道局のコールセンター(お客様センター)では、最大300席のオペレーター席すべてにAIを搭載した端末を設置しました。AI搭載端末は、顧客とオペレーターの会話をリアルタイムに分析し、適切な応答内容の候補を表示する仕組みです。
AIが直接問い合わせ客に回答するわけではなく、AIが示す応答候補を確認してオペレーターが回答するもの。
AIの精度は高く、問い合わせの75%以上を認識できており、オペレーターの負担軽減や応対の質の向上に貢献しているとのことです。同センターでは年間200万件以上の問い合わせがあり、オペレーターの人手不足や熟練オペレーターの退職による応対の質の低下が問題となっていました。
今回のAI活用によってそれらの問題解決を図っているのです。さらに今後は問い合わせ内容をデータ化し、ビッグデータとして管理することでAIのさらなる精度向上や、AI活用に取り組むこととしています。
AIはさまざまな現場で活用され始めている
東京都水道局で導入されたAIは、IBM社の「Watson」が利用されています。Watsonは日本国内のAIソフトウェアプラットフォーム市場のシェアトップであり、さまざまな現場で活用されているAIです。
たとえば、JR東日本では東京都水道局と同じように「知識探索」によるオペレーターサポートに活用しており、日本航空では「照会応答」によるAIアシスタントの活用を実現しています。
IBM社のWatsonは、一言でAIと言ってもさまざまな機能を有しているものです。照会応答の「Watson Assistant」や、知識探索の「Watson Discovery」、音声認識の「Speech to Text」など、AIで実現したい機能ごとにサービスを提供しています。
今回の事例のようなコールセンターのオペレーターサポートだけでなく、顧客の利便性向上などにも活用することができるのです。
日本社会の実情ではAI活用は避けて通れない
日本の15歳~65歳未満の生産年齢人口は減少を続けており、さまざまな業界で人手不足が叫ばれています。政府が推し進める「働き方改革」など、業務効率化による生産性の向上は、どの業界でも求められているものです。
日本社会の人手不足は一気に回復することは見込めず、新たな働き手の確保が重要となります。そこで注目されているAI活用は、徐々に事例も増えてきており、今後新たな働き手となることが期待されています。
今後の日本社会においては、AIをどのように活用するのかが重要視されるといえるでしょう。 〈参照〉東京都、水道コールセンターでAI活用 円滑な応答に/日本経済新聞