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加速するウォルマートのデジタル化戦略と新たな収益源

広報部

2020.04.21

ウォルマートはアメリカの小売最大手。Amazonがデジタル小売の最大手とすれば、店舗小売の最大手といえる存在でしょう。店舗小売の業績は、ECの台頭により落ち込んでいますが、ウォルマートの2019年11月から2020年1月期の売上は、前年同比の2%増と好調を維持しています。ウォルマートは非常にデジタル化に力を入れていることが要因のひとつなのではないでしょうか。

今回は、ウォルマートのデジタル化戦略とあわせて、新たに見据える収益源について見ていきましょう。

大型店をデジタル化することによるテコ入れ

ウォルマートの大型店「スーパーセンター」は、アメリカの郊外や地方に多く展開されており、全米店舗の7割弱を占めています。そんなスーパーセンターではデジタル化が進んでおり、リアルとネットの融合も進められているのです。

たとえば、ウォルマートでは店舗を単なる販売拠点と考えるのではなく、倉庫として利用したり、データ収集・分析の拠点として考えられたりしています。店舗を倉庫として考えていることは、同社のEC事業を牽引するオンライン・グローサリー・ピックアップ(OGP)というサービスからも見て取れます。

OGPは、通常のECショップのようにインターネットを通じて商品を注文し、店舗スタッフによって商品が店舗内でピックアップ・保管されたのち、顧客は車などで訪れて店舗で受け取ることができる仕組みです。店舗在庫をそのままECショップの在庫として取り扱うことで、店舗を倉庫として利用しているのです。

そのほかにもデジタル化の例として、掃除ロボットやAIカメラの導入が挙げられます。それらの導入によって、単純作業に従事するスタッフを減らし、顧客対応や店舗受取りの準備などの人員確保に割り当てているのです。

AIカメラでは、在庫状況の確認や生鮮食品の消費期限チェックで活用される場面もあり、スタッフの負担を減らしてコストを削減することにもつながっています。

収益源を増やすことも視野に入れている

ウォルマートでは、ニューヨーク州マンハッタン郊外にデジタル店舗を展開し、同店ではデジタル化戦略にさらに力を入れています。同店の天井には、数千個のカメラとセンサーが設置されており、顧客の動きや売れ行きを細かく追跡する事が可能です。

まだ試験段階ですが、今後はAIによるデータ分析によって、最適なデジタル広告の配信が考えられています。さらに、デジタル広告は取引先のメーカーに販売することも視野に入れており、新たな収益源となることが期待されています。

たとえば、同店で自転車を購入した顧客に対して、同社のECサイトで取引先メーカーのヘルメットの広告を表示して販売促進する、といったことが考えられているのです。

ウォルマートでは、このようなデジタル広告や総合診療所の設置といった新たな事業も積極的に立ち上げられています。アメリカのネット通販売上高は、2019年11月から2020年1月期には35%増となっていますが、前期と比較すると鈍化しているとのこと。

ウォルマートは強固な顧客基盤を持つ実店舗を主体とした戦略をもとに、新たな道を模索しているといえるのではないでしょうか。

〈参照〉ウォルマート、店舗まるごと収益源に デジタル武装加速/日本経済新聞

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