新型コロナウイルスによって、多くの企業が影響を受けています。アパレルの老舗企業であるオンワードホールディングス(オンワードHD)も多大な影響を受け、700もの実店舗を閉店することを発表しました。
今回は、オンワードHDの概況を紹介し、今後の小売業の見通しについて解説します。
今期は合計で1,400店舗を閉店
オンワードHDでは、オーバーストアの課題を抱えており、2019年には700店舗を閉店しました。それらに加えて、昨今の新型コロナウイルス騒動の影響を受け、さらに700店舗を閉店する見通しとしています。
4月13日に行われたオンワードHDの2020年2月期決算会見では、連結売上高は前年比3.2%増となったものの、最終損益は521億3,500万円の赤字と発表。2021年2月期の連結業績予定に関しては、新型コロナウイルス感染拡大による先行き不透明を理由に未定としました。
オンワードHDでは、4月に入ってから実店舗での主力ブランドの売上が7割減少するなど、多大な影響を受けていることがわかります。
反対にEC事業は好調
オンワードHDでは今後人員の削減はせず、ネット通販に力を入れることとしています。「デジタル」「カスタマイズ」「ライフスタイル」を軸とした成長戦略を加速させていく方針であり、その要はEC事業です。
オンワードHDのEC事業を見てみると、2019年度のグループ全体のEC売上高は前年比31%増であり、自社EC比率は85%に上昇しています。また、2020年3月の売上では、オンワード樫山の総売上は31%減少していますが、EC単体の売上は45%増となっており、EC事業は好調であることがわかります。
オンワードHDでは、2020年度のEC目標売上高を50%増、将来的には売上の半分を占める規模にまで成長させる予定です。
コロナ収束後に消費者の価値観が変わる可能性がある
日本でも非常事態宣言が発令されたことにより、「巣ごもり消費」によるECの比重が大きくなっています。オンワードHDでは、会員顧客「オンワードメンバーズ」を約300万人有しており、その中にはECを利用したことのない会員も多いといいます。
今後は「店舗とECの両方で買い物をするオムニチャネル会員を増やしていきたい」と発言しており、同社の保元社長は「(新型コロナウイルス収束後に)世界的に消費者の価値観やライフスタイル、消費行動が大きく変化することが予見される」と発言しました。
新型コロナウイルス騒動以前の考えに縛られず、柔軟な発想で取り組んでいくことが必要だといえるでしょう。