テクノロジーを活用し、既存のビジネスモデルや顧客体験、社内業務の新たな価値や収益を生み出す新たなビジネスモデルである「デジタルビジネス」。ITの発達によって耳にする機会が多くなった単語ですが、遅々として進まない現状にある企業も多いことでしょう。その原因は6つの考え方にあると見られており、今回はその原因とあわせて、企業のデジタルへの取り組みの現状やデジタルビジネスの効果を紹介します。
企業のデジタルへの取り組みの現状
IT分野を中心とした調査・助言を行う企業であるガートナーのアナリストによれば、「企業の60%はデジタルの取り組みが弱い」と指摘されています。CEO(最高経営責任者)の82%がデジタルトランスフォーメーションを計画しているにもかかわらず、ビジネスモデルを大きく変える必要性を理解しているCEOは22%に過ぎない、とのこと。
従来の業務・プロセスを単純にデジタル化するだけでなく、根本から最適化することが重要であるのに対して、デジタルの取り組みに関しては目標設定が低すぎる企業が多い現状にあります。
その原因としては、旧態依然とした考え方にあると見られており、主に6つの考え方が該当すると報告されています。
デジタルビジネスが進まない6つの原因・考え方
デジタルへの取り組みが進まない6つの原因・考え方は次のとおりです。
- IT部門だけがデジタルに責任を持つ
- グローバルな地域的役割分担が固定されている
- 成長はコアビジネスから生まれる
- CX(顧客体験)を自社のテリトリー内で考える
- 企業の成功はプロセスのみにかかっている
- アジャイルの実践がアジャイルな組織を作り出す
このような原因・考え方を持つ企業では、デジタルプロジェクトを通じた成長が阻まれると報告されており、それらを刷新して全社を挙げた積極的な取り組みを推進する必要があります。
特に「IT部門だけがデジタルに責任を持つ」という部分は、最も気をつけるべき点と言えるでしょう。IT部門だけでデジタルフォーメーションを進めることはできず、デジタルが自社にとってどのような意味を持つか、という考え方を全社に浸透させなければなりません。
デジタルビジネスを成熟したアプローチで進めることが重要
実際にデジタルビジネスに成功した事例としては、イギリスのスーパーマーケットチェーンのTescoや、同国の石油ガス大手のBPなどが挙げられます。Tescoではアナリティクスを活用してサプライチェーンを効率化した結果、1億5,000万ドルのコストの削減に成功しており、BPではIoTセンサーを活用することで年間70億ドルもの節約に成功しました。
これらの改善事例の共通点は「デジタルビジネスを成熟したアプローチで進めたこと」です。デジタルビジネスが単純な業務・プロセスのデジタル化にとどまらないことを全社的に理解し、根本から最適化を図ることが重要なのです。