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SONYの事例から見るリカーリングビジネスがもたらすもの

広報部

2020.08.05

近年、「リカーリングビジネス」に注目が集まっており、さまざまな企業がリカーリングビジネスモデルを展開しています。リカーリングビジネスは、一度モノを売って終わりにするのではなく、顧客との継続的な関係を築いた上で安定的な収益を得ることを目指す考え方です。

今回は、リカーリングビジネスの概要とあわせて、SONYの事例からリカーリングビジネスの有用性を見ていきましょう。

「所有から利用へ」-リカーリングビジネスがもたらすもの

リカーリング(Recurring)とは、「繰り返し」や「循環」を意味する単語です。ビジネスにおいては顧客との継続的な関係を築き、繰り返し利用されることで安定的な収益を得ることを目指すビジネスモデルとなります。

実はリカーリングビジネスは古くから存在しており、代表的な例は100年以上前にアメリカのカミソリメーカー「Gillette」が、カミソリの替刃の取り替え需要で継続的に収益を上げられるようにした事例があります。カミソリ本体を無料配布し、替刃を顧客に継続的に利用してもらうことで収益を上げたのです。

近年流行りの定額制サービスのサブスク(サブスクリプション)や、モノを共有するシェアリングもリカーリングビジネスの考え方に則ったビジネス手法です。これらはモノを「所有」するのではなく、継続的に「利用」する考え方の上で成り立っていますが、リカーリングビジネスの本質的な考え方と同じなのです。

ICT総研が2020年2月に発表した「2020年サブスクリプションサービスの市場動向調査」によれば、2017年に8,720億円だった日本の市場規模は、2019年には31.1%増の1兆1,440億円にまで伸びました。

このことからも、今後顧客に求められるビジネスモデルであることがわかり、リカーリングビジネスは主要なビジネスモデルとなることが予想されます。

業績が復活したSONYの事例

リカーリングビジネスによって業績が復活したSONYの事例を参照し、リカーリングビジネスがもたらす影響についてもう少し見ていきましょう。

SONYは数年前まで赤字決済が続いていましたが、2020年4~6月期の連結決算は純利益が前年同期比で53%増となりました。その背景には全売上高の4~5割に達するリカーリング売上高にあるといえるでしょう。

SONYのリカーリング収益源は複数挙げられますが、今回はその中の一つであるゲーム部門を取り上げます。SONYのゲーム部門といえば「プレイステーション」のハードウェア収入が大半を占めると考えられていますが、実は「会費収入」となるリカーリング収入源が稼ぎ頭なのです。

プレイステーション4では、オンライン対戦などを楽しむために「PS Plus」の会員となる必要がありますが、月額税込み850円で会員となれます。全世界で約4,150万人のユーザーが存在しており、単純計算で「850円×12か月×4,150万人=4,233億円」もの年間利益を得られるのです。

プレイステーション4の発売は2013年であり、ゲーム部門のハードウェア売上高は2016年度から2019年度にかけて約34%も減少していますが、リカーリング収益源は同じ3年で57.1%も成長しました。

もちろん、SONYの業績が復活した要因としてはゲーム部門だけではありませんが、リカーリングビジネスがもたらす影響が分かる事例ではないでしょうか。

今後は、さまざまな業種・業態によって詳細は異なるものの、「顧客との継続的な関係を築き、収益を得る考え方」であるリカーリングビジネスモデルがさらに普及することでしょう。

〈参照〉リカーリングビジネスとは? ソニーの“ヒットなき復活”の仕組みから解説/ビジネス+IT
参照〉ソニー、ゲーム好調で純利益53%増 4~6月(日本経済新聞)

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